まだまだ現役で頑張って欲しかった2011midのiMac。今からおよそ1年前、それまで元気だったiMacに不具合が。何の前触れもなく異常が発生したかと思えば、そのままうんともすんとも立ち上がらなくなってしまいました。

 作業をしていたら突如過去に経験のないフリーズ。再起動してみると画面の色が明らかにおかしく、案の定リンゴマークから先へ進まない。

 この縦縞模様の症状はネットでいくつか報告されており、どうやらGPUが故障したことによるものだとか。2011年の物はGPUが壊れやすいなどと言われており、それはもうメーカーが交換品を無償で提供するくらい。しかし言わないとくれない物だからそんな情報は知らず、今回の故障は購入から8年も経っているということもあり、とっくにその交換期間を過ぎてしまっています。
 
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 今回の故障について結論を先に書くと、なんとか独力で修理(応急処置?)ができました。写真を残しておいたので、当時の作業を思い出しつつせっかくなので記事に残しておこうと思います。


 
 セーフブートでの起動やその他起動時にキーボードの任意のボタンを押しながら起動するような特殊な起動は全て試しましたがどれもダメ。唯一起動できたのが「シングルユーザーモード」。これは通常のiMac使用方法がGUIであるのに対してCUIで操作できるモード(だと思います)。その方面は詳しく無いのでハッキリと言えませんが、GPUを使用せず操作ができるのでGPUが壊れていてもHDD内のデータを操作できる。まずはこれを利用してHDD内のデータを救出しました。

 この縞模様がネットで掲載されているものと酷似しているとはいえ、正直現段階ではまだGPUが故障の原因とはハッキリと言えません。しかしGPUを使用しない(らしい)シングルユーザーモードが使えたので、十中八九GPUが原因ではないかな…と。

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 このシングルユーザーモードでも縞模様ですが、おそらく通常であれば黒背景なんでしょう。このモードでHDD内の任意のフォルダにアクセスしその後SDカードをマウント、そのSDカードへコピーコマンドを使用して少しずつ取り残されたデータを外部へ移していく作業。手元にある空のSDカードは64GBが最大でしたので、ちまちまとコピー。iMacの内臓HDDは500GBで、中身もほぼ満タン。外付けHDDは3TBあるのでそれを使えば一度にコピーできそうですが、中にデータが入っており万一消えたら困るでとりあえずSDカードで送ることにしました。

 SDカードを認識させるのも一苦労。一般的なGUIであればカードをさすとウィンドウが出てきたりしますが、これはそうもいかずコマンドを入力する必要があります。

「mount -uw /で読み書き可能に、ls /dev/disk*でsdを探す。mkdir /Volumes/usbでマウントポイントを作成。mount_msdos dev/disk1s1 /Volumes/usb 」

と当時の自分のメモがありましたが、今はもう操作方法を覚えていません^^;



モアレ対策で斜めに画面を撮影してあります
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  その他困ったのがフォルダ名。HDD内のフォルダの殆どは当然日本語で名前を付けてありますが、日本語だと????と化けて何のフォルダなのか一見分からない。中身が分からないだけならまだしも、フォルダ名を指定できないとコピーが出来ない。その????フォルダが格納されている1つ上の階層のフォルダ名が英語ならばまとめて保存してしまえば問題ないのですが、容量が64GB以上あったりするとそうもいかず。
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 ちなみにフォルダ名に???が入って手入力でフォルダ名を指定できない時、?の位置が「???英数字」ではなく「英数字???」であれば指定する方法がありました。…ありましたがどんな方法だったのかこの操作メモが残ってない。とにかくフォルダ名を数文字入れてから、とあるキーを押すとその入力した名前に続くフォルダ名を自動で入力してくれるという機能。それを利用してフォルダを指定する方法があります。

 大分操作にも慣れたので、データの移動先をSDカードではなく外付けのHDDに変更。iMacの容量程度であればなんとかまとめて入れられるのでこちらの方が効率が良い。ただしコピーに時間がかかるので就寝時にコピー開始させて、寝ている間に進めさせておきます。
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 数GBのコピーですら本体は熱々。寝ている間は常に扇風機が本体に当たるように設置。おかげで本体はちょっと温い程度にしか温度は上昇せず、無事にデータの救出が完了しました。今回の故障の原因も恐らく「熱」なので、無視できない問題です。
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 データ救出が終わったその後も、当時の私はなんとかしてiMacを復活させられないかと色々探っていたようです。各起動方法をあれこれ試したり、GPUを使用せずCPUでGPUを補う起動方法が無いかと探したり…どんな作業をしたか色々とメモを残しておいたはずですが、当時の写真しか見当たらず。さらには面倒くさくて放置(1年間^^;)して当時の記憶が薄れているのも大きい。
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 故障したiMacは時間をおいても当然自然治癒することはなく、結局大きくて重たいただの鉄の塊と化して部屋の片隅に1年間放置されることとなりました。そして1年後…

 GPUの故障についてはリフローと言う修理方法があります。GPUのチップと基盤の間のハンダにクラックが入り接触不良となったところへ再度熱を加えて溶かしくっつけるという方法。iMacは熱がこもりやすく直ぐに熱々になるので、「GPUの加熱→常温→加熱」と繰り返すうちにクラックが入ってしまうのだとか。そして今回故障した2022midのGPUには割れやすいハンダが使われているのだとか。

 今回の症状からしてGPU以外の原因は考えにくいとはいえ、個人で行うリフローはそのまま完全に復旧不可能な故障へ繋がる可能性もはらんでおりますので、1年間躊躇しておりました。しかし、このまま部屋に放置していてもただの邪魔な鉄でしかないので、覚悟を決めてリフローに挑戦。

 iMacのGPUの個人リフロー方法はいくつか情報が載せられており、オーブンでグラフィックボードを焼く方法やヒートガンで炙る方法まで。オーブンは流石に怖かったので温度調整機能のついたヒートガンを購入して炙る事にしました。


 iMacの場合は問題のグラフィックボードを摘出するまでが大変。かなり奥深くに取り付けられているので何本ものコネクタを外さねばいけません。その上焼いた後の動作確認はまた一連の取付作業を行わねばいけません。かなり根気のいる作業。

リフローにあたって必要なものがこれら。
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吸盤は画面を外すためのもの。専用のものも売られいるようですが直ぐに欲しかったのと良いのがあったので100均で調達。フラックスはハンダのノリを良くするものだとか。今回余った分は今後エフェクター作りや各種プラグ類のハンダ付の際、ハンダが上手く乗らずに困ったら活用できそうです。シリコングリスとはGPUに塗布するもの。
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グリスというとベアリングや回転部品などに使うグリスを連想しますが、パソコンのチップなどの冷却に用いるこの手の物もあるみたいです。 
  
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 早速画面を外して内部の基盤とご対面。iMacの分解方法は至る所で紹介されているので割愛します。正面の画面を外してHDDや光学ドライブ、ファンなどを外してマザーボードに載ったGPUを摘出します。

 ここで明らかになる驚愕の事実。毎年夏には熱による故障が怖いので吸気口やメモリ挿入口などを掃除機で清掃していました。しかしそんなiMacですら…
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内部は埃だらけ。写真は画面を外しただけの状態でこの有様。冷却に欠かせない大事なファンも酷い。綿埃ではなく完全に固形の汚れが羽と羽の間に詰まっており、これでは空気もまともに送れない。熱を持つ原因はこれだけでは無いとはいえ、この熱排出能力の低下は無視できない。
 
 画面を外すだけであれば然程大変な作業ではないので、年に1度程度は空けて掃除するのがイイのかもしれません。もちろん今回もしっかり綺麗にしておきます。本当は水で丸洗いしたいくらい。センサーがとりつけてあるのでできませんでした。

 というか、そもそもこれは構造的に問題があるでしょう。色々と詰め込み過ぎ^^; 
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 上の写真は左側の電源ユニットの固定を外し、中央のHDDと右の光学ドライブを取り外した状態。GPUは中央下の基盤の裏側に取り付けられているので、ここからさらに右下のファンを外して下側の基盤全体を取り外す必要があります。かなり奥深い。
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 沢山のパーツが入り組んでいるため外す必要があるコネクタが数種類存在しますが、各部コネクタは何度も付けたり外したりを繰り返すうちにどこがどこの物か覚えてしまいます。


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 とうとう目的の基盤を外すところまできました。目的のモノ以外の殆どのパーツが外されています。基盤を取り外す際も注意が必要。基盤を少しだけ浮かせてできた隙間に手を入れて、手探りで裏側のコネクタを外さねばいけません。それ以外の配線もたくさんくっついているので、損傷させないように細心の注意が必要。
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 内臓HDDや今回の基盤などを取り外されたiMac本体は驚くほど軽い。あのずっしりとした重いiMac本体の面影はなく、本当にただの「入れ物」となったiMac。
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GPUとCPUは同じマザーボードに搭載されており、それらの熱は橙色の恐らく配管と思われるもので空冷のひだ(ヒートシンク?)に送られて冷却される仕組みのよう。色々と詰め込まれたiMacの本体ですが、その隙間を縫うように配管が取りまわされて、最終的に上部の排出口から熱風として排熱されるようです。
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このカバーの中にグラフィックボード

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 そして問題のグラフィックボード。こいつが今回の不具合ヵ所と思われる部品です。白いのはGPUグリスでしょう。GPUグリスは定期的に塗りなおすものらしいですが、取り外したGPUに塗られていたグリスはまだ効力が残っていそうな雰囲気。ですがこれから焼くので一度綺麗に拭き取ります。
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アルミホイルで回りを囲い、ヒートガンで炙る。ここまで分解してしまったのですから、覚悟はとっくにできています。
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 ここで問題となるのが、「どの温度」で「どのくらいの距離」で熱風を当てて「何秒」熱するか。本番作業に入る前、ハンダ単体でテスト。ハンダに直接ヒートガンを向けて融点と言われる温度に設定して炙るも溶けない。最終的に300度まで設定温度を上げましたがそれでも溶けない。ヒートガンの温度設定はあくまで「設定温度」であり、「実際に出る温度」ではないのが難しいところ。

 GPUに当てた温度が低いとハンダが溶けず、溶けないと故障が直らずまたパソコンを組み立て・分解しなくてはいけません。かといって高いと今度はチップを損傷させてしまう恐れが。そうなると完全に再起不能となる可能性もあります。

 色々なサイトでヒートガンによる炙り温度やオーブン焼きでの温度、またiMacに限らず別のパソコンのグラフィックボード焼きの温度などを参考に決めます。それらの情報と個人的な感覚からヒートガンを240度設定にしての炙りに決定。まず電源を入れて100度設定で30秒予熱。その後240度設定で3分予熱してからGPUチップを10分炙る。100度設定に戻して徐々にチップから遠ざけて温度を下げていく。という具合で挑戦。

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 恐る恐る電源を入れてみると…

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縦縞が出てこない!
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エラーの画面が出てきて焦りましたが、これはコネクタをひとつ接続し忘れたために表示されたものでした。マザーボードを取り外す際に手を隙間から入れて手探りで外したあのコネクタ。

 その後無事に起動。運よく直っただけでなく、一度のリフローで復活してくれました。iMacを分解→組み立ての手順を何往復もさせられる覚悟もしていましたが、なんとかなりまして一安心。コネクタ類の付け忘れや何だかんだあり何度も開け閉めしてしまいましたが、それを除けば最少の手数です。
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 しかし不思議な感覚です。温度設定もそれほど高くなく、その温度はテストでハンダ単体に当てても溶けなかった設定温度。さらにチップに熱風を当てても見た目は変わらないので直った実感がありません。実感が無いからこそ「また再発してしまうのではないか」という不安は残ります。

 どの道iMacは一線から退くことになりますしGPUに過度な負荷がかかる作業はしないでしょうから問題無いとは思います。iMac本体の温度管理と使用方法させ注意すれば、まだ生きていてくれそうです。
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 しかしまさか一度で直るとは思っていなかったので、まだグリスを塗っていません。再度分解してGPUにグリスを塗布。
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 何故か背景が出荷初期のもののような画像になってしまっていたこと、データ容量はあるのにデスクトップにアイコンがひとつもない事が不思議。デスクトップに保存していたデータに関しては、シングルユーザーモードでデータを救出する際にデータを一ヵ所にまとめてから移動させたような記憶があるような無いような。1年前から放置していたのでよく覚えていません。

 また、何故かパソコンを起動させるとファンが高速回転。最初は画面をしっかりはめていないために音が漏れて大きく聞こえるだけかとも思いましたが、画面を完全に取り付けても変わらず。何度も部品を付けたり外したりしている間にファンのケーブル類を傷つけてしまったのかとも思いましたが、その後導入したファンコントロールによると温度表示や回転数の表示が問題なく出ていたので、その線は無いみたいだし。使えないわけでは無いので、毎度のことながら原因究明は後回しです。
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 とにもかくにも、これでMacでしか開けないデータなどの移行もGUIで視覚的に無事操作できるようになりました。今回データ救出に念のため移動コマンドではなくコピーコマンドを使用したので、この後重複データの処理に膨大な時間がかかったことは言うまでもありませんが。